従業員のモチベーションを上げ、組織の活性化につなげる”セルフ・キャリアドック”とは?

こんにちは。

キャリアコンサルタントの川野です。

仕事柄、企業の代表や人事の方とお話をする機会も多いのですが、最近

経営者
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従業員のモチベーションが低く、会社の理念が浸透していないように感じる。

やる気のある社員を育てるにはどうしたらいいのか、方法もわからない。

こんな声が多く聞かれるようになりました。

同様に従業員のモチベーションに対する悩みは多いものの、コストなどの懸念もありなかなか対策に踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、従業員一人一人が活力を見出し、引いては企業の成長につながる方法の一つとして、近年導入企業も増えている『セルフ・キャリアドック』について解説していきます。

セルフ・キャリアドックとは?

セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取り組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことです。『厚生労働省:「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開』より

『人間ドック』が身体の健康診断であるのに対し、『セルフ・キャリアドック』はキャリアのメンタル健康診断というイメージです。

単に「仕事をする」ということだけでなく、自身のライフプランに併せてどんな働き方をしたいか、どんな姿で在りたいかといった、将来も踏まえた”キャリアビジョン”を明らかにしていきます。

そうすることで従業員一人一人が自身の現在の姿や働き方を自分ごととして再認識し、自分のキャリアに主体的に取り組む意識醸成に繋がっていきます

ただし、いきなり「セルフ・キャリアドックを受けてください」と言っても、受けたことのない従業員は単なる会社の指示としてしか認識をしないため、まず個々のキャリア形成の必要性や制度の理解を深めるための研修を行い、その後キャリアコンサルタントと1体1の面談を行います。

面談終了後は個々にフィードバックをしたり、全体としての結果をまとめ企業側にフォローアップすることで課題や今後の方策について提案したりしていきます。

これらの一連の流れを『セルフ・キャリアドック』としています。

どうして必要なの?

従業員のモチベーションを上げ、企業の成長につなげるために、なぜ『セルフ・キャリアドック』が必要なのでしょうか。

それは近年の時代背景やそれに伴う「働く」価値観の変化が関係しています。

日本の就業事情は、人口減少により人手不足が進み、同時にAIの発達で無くなる仕事があると言われていたり、人生100年時代で働ける年齢が高齢化したことや、終身雇用・年功序列の崩壊などこの30年で大きく変化してきました。

加えて、リーマンショックや物価高騰、自然災害や感染症の流行など産業構造をも脅かすような現象が次々に発生し、これからの未来は不透明さを増しています。

そんな中で、働き方についても個性を尊重する価値観が広がっており「(生き方を含む)自分のキャリアがこのままでいいのか」と考える機会が増えています。

自分は何のために働き、何を達成したいのか、優先したいことは何か、今の仕事のままでいいのか、今できることは何か、といった気持ちの棚卸しが短いスパンで必要になってきているのです。

しかし自分の気持ちの棚卸しというのは、自分ではなかなかできないもの。

忙しい毎日、目まぐるしく変わる時代の中で一人一人がキャリアと向き合う機会を作ることは、不安を抱えたまま仕方なく働くのではなく、それぞれが目的を持って意欲的に働くきっかけにもなってくれます。

こうして仕事に意欲的になれる従業員が増えていけば、自ずと組織も活性化され、生産性の向上に寄与することに繋がっていくのです。

どんな効果があるの?

『セルフ・キャリアドック』制度は、経営理念を軸とした組織に所属するためのマインドやスキルを育てる”人材育成”の観点とは若干異なります

企業や組織の視点に加えて、従業員一人一人がキャリア開発を進め主体性を発揮することを目的とした、”人材支援”の観点が強い制度です。

ここでいう”人材支援”は”働く人のマインド支援”とも言い換えられ、次のような効果が期待できます。

節目を迎える従業員の課題克服

『セルフ・キャリアドック』制度の大きな役割として期待されるのは、節目を迎える従業員の課題克服です。

例えば、離職率が高くなる入社3年以内の新卒採用者に対し、働く意欲や仕事への向き合い方、今後のキャリアプラン作りをサポートすることで仕事への意欲や職場への定着を高めることができます。

他にも、職場復帰率の低い育児・介護休業者、経験を積み転職を意識し始める中堅社員、再雇用や早期退職を意識し始めるシニア社員など、ライフイベントや年齢・勤務歴によりキャリアに節目を迎える従業員に対し、現状の悩みと仕事への取り組み方を振り返ってもらい、絡まっている気持ちを整理しながら改めて働く意欲を引き出していきます。

全体的な従業員のモチベーションアップ

”人間ドック”同様に『セルフ・キャリアドック』を全社的な取り組みとして導入すると、定期的な従業員のメンタル健康診断になります。

先述のような「節目を迎える従業員」のみならず、働く人は誰でも仕事以外の役割もあって、私生活と仕事の両面で様々な出来事に直面し、モチベーションを左右されるものです。

毎回落ち着いて気持ちを整理したり、スイッチを切り替えることができれば苦労はないのですが、そうも上手くいかないのが人間です。

定期的に『セルフ・キャリアドック』を実施し、働く目的や意欲、現状と理想のギャップを認識しながら気持ちの棚卸をすることでモチベーションの維持・回復の効果が期待できます。

会社の課題認識をプラスして理念浸透促進

『セルフ・キャリアドック』は実施の前に経営者・人事担当者から従業員支援で困っていることや課題についてヒアリングを行います。

その上で、面談時に「会社の理念や目標についてどう考えているか」、その中で「自分の役割や姿勢についてどのように認識しているのか」といった内省を促すことで、理念の理解度や認識度が見えてきます。

これらを総合的にまとめ、企業側に報告し、課題解決に向けてどのような支援が必要かをフォローアップしていきます。

従業員の現状を正しく理解した上で方策を実行することができるので、理念浸透を促進する取り組みにつなげていくことができます

どうやったら実施できる?

では、この『セルフ・キャリアドック』実際にどのように実施していくのでしょうか。

基本的にはキャリアコンサルタントの国家資格登録をしている専門家にお願いするのですが、次の二つの方法があります。

①”キャリア形成学び直し支援センター”に依頼する

キャリア形成・学び直し支援センター「企業・団体ページ」

一つ目は、厚生労働省委託事業である〈キャリア形成・学び直し支援センター〉に依頼する方法です。

公式サイトからメールで無料相談ができるようになっています。

全国47都道府県にセンターがあり、公式サイトには『セルフ・キャリアドック導入事例』も多数掲載されていますので、参考にしてみると良いでしょう。

メリット・デメリット

キャリア形成・学び直し支援センターに依頼する最大のメリットは、相談も支援も無料で受けられることです。

初めて『セルフ・キャリアドック』を実施する場合など、導入に向けてまずはどんなものなのか体験するには向いていると思います。

対するデメリットは、委託事業であるため事業者が年単位で変わる可能性があり、年度を跨ぐ長期的な伴走や、ターゲットを絞らない全社員対象の取り組みには向かないということです。

キャリアコンサルタントに直接依頼する

二つ目は、国家資格登録のあるキャリアコンサルタントに直接依頼する方法です。

キャリアコンサルタントを検索する方法は、個人・団体等のHPやSNSを活用するのと他に、『キャリコンサーチ』という検索システムを利用する方法があります。

キャリアコンサルタントは名称独占資格で、国家資格を有する者しか名乗ることはできません。

『キャリコンサーチ』は国家資格登録番号を持っていないと登録できないため、安全にやり取りするのであればここから探してみるのが良いでしょう。

メリット・デメリット

キャリアコンサルタントに直接依頼するメリットは、カスタマイズ性が高いということです。

例えば、企業がある地元のキャリアコンサルタントであれば、その土地の企業情報や暮らしの価値観にも理解が深いという人柄そのものが強みになり、面談時には相談者との関係構築が進み、相談者理解に繋がります。

さらに、長期的な伴走をお願いしたり、社の専属キャリアコンサルタントとして全社員を対象としたキャリアコンサルティングや、その結果を踏まえた企業課題解決へのフォローアップ、キャリア形成や人材育成に関する研修など、より企業の要望を踏まえたカスタマイズ性の高いプロセスの実施が期待できます。

対して、デメリットはやはり有料であることです。

キャリアコンサルタントの習熟度、研修や対象の従業員数等に応じて金額は前後しますが、モチベーションアップといったソフト面のサポートに対してはすぐに費用対効果を感じにくい分、コスト面はネックになるかもしれません。

まとめ

今回は近年導入企業が増えている『セルフ・キャリアドック』制度について解説していきました。

令和4年度の能力開発基本調査では、能力開発や人材育成に関する問題点として、「指導する人材が不足している」「人材を育成しても辞めてしまう」「人材育成を行う時間がない」ことが最も多い回答となっています。

さらに、キャリアコンサルティングの効果として「労働者の仕事への意欲が高まった」という回答が最も多くなっており、従業員に対するキャリアコンサルティングの必要性が見えてきます。

人を変えるのには相応の時間がかかります。

スタートが出遅れる程、結果が出るのも遅くなります。

経営理念を浸透させ、主体的に行動する従業員を増やしていくには一人一人との対話の機会が重要だとは理解しながらも、それを実行する手立てがないという企業も多いようですが、この機会に『セルフ・キャリアドック』制度に対する理解を深め、喫緊の課題から取り組んでみてはいかがでしょうか。


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プロフィール
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川野 美紗子

Local Career Mate 代表
宮崎県在住のキャリアコンサルタント/インターンシップコーディネーター
若年層の女性管理職の経験を基に、地方✖️女性✖️キャリアに関する情報発信やアドバイス、コンサルティング等を行っている。
個人・企業向けキャリアコンサルティング、実践型インターンシップの企業伴走、キャリア教育や人材支援に関する研修講師やファシリテーター、キャリア記事の執筆などを行なっている。

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